
SaikoSeiko
2025年6月27日 79
AIがコードを書く時代に、なぜWebエンジニアは必要なのか
近年、生成AIの進化は目覚ましいものがあります。
数年前まで「AIがコードを書く」という話は、一部の研究者や先進的なエンジニアの実験領域でした。しかし現在では、自然言語で指示を出すだけでWebアプリケーションのプロトタイプが数分で生成される時代になりました。
私自身、北アメリカ企業においてWeb開発およびAI開発に携わる中で、ここ1〜2年の変化のスピードには正直驚かされています。
以前であれば数日かかっていた管理画面の雛形作成が、今ではAIによって数十分で完成することも珍しくありません。
では、こうした状況を見ると当然ながら次の疑問が生まれます。
「AIがWebサイトを作れるなら、エンジニアは不要になるのではないか?」
結論から言えば、その答えはNOです。
むしろAI時代だからこそ、エンジニアの価値は以前よりも明確に分かれるようになってきています。
→AIは何を変えたのか
まず理解すべきなのは、AIが代替したのは「開発」という仕事そのものではなく、「実装作業の一部」だということです。
例えば現在の生成AIは以下のような作業を非常に得意としています。
・Reactコンポーネント生成
・Next.jsのページ作成
・REST API実装
・SQLクエリ生成
・テストコード生成
・CSSスタイリング
・ドキュメント作成
・リファクタリング支援
これらは従来、多くのエンジニアが時間を費やしていた領域です。
しかし実際のシステム開発では、これらはプロジェクト全体の一部分に過ぎません。
現実のプロダクト開発では、
・ビジネス要件の整理
・アーキテクチャ設計
・セキュリティ設計
・パフォーマンス設計
・可観測性設計
・CI/CD構築
・クラウドインフラ設計
・技術的負債の管理
といった要素が大きな比重を占めています。
AIはコードを書くことはできます。
しかし「どのコードを書くべきか」を決定する責任までは負ってくれません。
→AIとWeb開発の関係
現在のWeb開発は、AIによって大きく変化しています。
特に以下の技術領域ではAIとの親和性が非常に高くなっています。
⭐️フロントエンド開発
React、Next.js、Vueといったモダンフレームワークでは、UIコンポーネントの生成が非常に容易になりました。
実際、Figmaからデザインデータを取得し、AIを介してReactコードへ変換するワークフローも一般化しつつあります。
以前であれば「ボタンを中央揃えにするだけ」で30分悩むこともありました。
現在はAIが数秒で答えを提示します。
CSSとの格闘時間は確実に減りました。
世界中のエンジニアが少しだけ幸せになった瞬間です。
⭐️バックエンド開発
API実装やORM定義などの定型処理もAIが得意とする領域です。
しかし本質的な難しさは依然として残っています。
例えば、
・ドメインモデリング
・トランザクション設計
・データ整合性
・分散システム設計
・キャッシュ戦略
などは、依然として人間の知識と経験に依存します。
AIはコード生成が得意ですが、業務要件の裏に存在する暗黙知までは理解していません。
⭐️クラウド・インフラ領域
AWSやGCPの構成図をAIに生成させることは可能です。
しかし、
「このシステムは本当にマルチリージョンが必要なのか」
「RPOとRTOはどこまで求められるのか」
「運用コストと可用性のバランスは適切か」
といった判断は、依然としてアーキテクトの仕事です。
クラウド利用料の請求書を見て青ざめる体験までは、まだAIは代わってくれません。
→AI時代におけるエンジニアの格差
ここが最も重要なポイントです。
私は現在、AIによってエンジニアが二極化する時代に入ったと考えています。
⭐️初級エンジニアのAI活用
初級エンジニアは主に「回答取得ツール」としてAIを利用します。
例えば、エラー解決、サンプルコード生成、SQL作成、ドキュメント要約などです。
これは非常に有効です。
しかしAIの出力をそのまま採用するケースも少なくありません。
その結果、「動くけれど理解していないコード」が増えるリスクがあります。
⭐️中級エンジニアのAI活用
中級エンジニアになると状況が変わります。
AIをコード生成ツールとして利用しながら、コードレビュー、リス分析、性能評価、セキュリティ確認を同時に行います。
AIは部下のような存在になります。
ただし、非常に優秀な日と少し危険な日が混在する部下です。
レビューなしで本番投入すると、後日インシデントレポートを書くことになるかもしれません。
⭐️上級エンジニアのAI活用
上級エンジニアやアーキテクトになると、AIはさらに異なる位置付けになります。
彼らはAIに対して、アーキテクチャ比較、システム設計レビュー、脅威分析、設計代替案生成、技術選定支援を行わせます。
つまりコードを書くためではなく、「思考を加速するため」に利用します。
この段階になると、生産性向上率は単純な数倍ではなく、意思決定速度そのものに影響を与えるようになります。
→AI時代に求められるエンジニアとは
これから重要になるのは「コードを書く能力」だけではありません。
むしろ、システム思考、ドメイン知識、ビジネス理解、アーキテクチャ設計能力、コミュニケーション能力、AI活用能力がより重要になります。
AIは優秀な実装者です。
しかしプロダクトの成功に責任を持つのは人間です。
顧客要件を理解し、将来の拡張性を考慮し、技術的負債を管理しながらシステムを成長させる仕事は、依然としてエンジニアの役割です。
→まとめ
AIは間違いなくWeb開発のあり方を変えました。
今後、コードを書く作業の多くはAIによって自動化されていくでしょう。
しかし、それはエンジニアが不要になることを意味しません。
むしろ逆です。
AIが実装を担当する時代だからこそ、「何を作るべきか」、「なぜその設計なのか」、「その技術選定は正しいのか」を判断できるエンジニアの価値はさらに高まります。
これからの時代は、AIに仕事を奪われるかどうかではありません。
AIを使って誰よりも速く価値を生み出せるかどうかです。
少なくとも私は、AIを脅威ではなく最強の開発パートナーとして捉えています。
もっとも、たまに自信満々に存在しないライブラリを提案してくるので、そのあたりはまだ人間によるレビューが必要そうですが。

